死亡による損害


死亡慰謝料

交通事故により亡くなってしまわれたこと自体の精神的苦痛に対する賠償です。
死亡慰謝料も他の慰謝料と同じく、裁判上の基準、任意保険の基準、自賠責保険の基準と、大きく3通りの基準があります。
同じ事故の同じ人に対する慰謝料に、物差しがいくつもあることは、おかしな話なのですが、細かく分けるともっとたくさんの基準が存在し、各基準ともある程度、定型化されています。

死亡慰謝料は、亡くなった方が一家の中でどういった立場であったかで基準が異なり、大きく以下の3つに分けられ、裁判上の基準額の目安は以下のとおりです。

  • 一家の支柱である場合 2700万円~3100万円
  • 一家の支柱に準ずる場合 2400万円~2700万円(母親や配偶者の場合)
  • その他の場合 2000万円~2500万円

亡くなった方が一家の大黒柱であって、その方の収入によって生計が維持されているような場合は「一家の支柱」、一家の生計を経済的に支える立場には無いが、一家の支柱と並ぶ重要な地位を占める者、いわゆる主婦などは「一家の支柱に準ずるもの」、独身者、子供、職業に就いていない68歳以上の高齢者等は「その他」となります。
しかし、これらはあくまで基準であり、具体的な個々の状況により増減されるべきものです。

裁判例を見ると、亡くなった本人の慰謝料と親族固有の慰謝料とを別に請求し、認定されている例が多くありますが、認定額を見ていると、上記基準は、親族固有の慰謝料分も含めた総額として表しているものと思われます。

任意保険では、各損保会社により分類・金額に若干の違いがありますが、1500万円~2000万円といったところです。

自賠責保険では、死亡した本人分の慰謝料は、350万円のみで、後は遺族の慰謝料となります。
ここで言う遺族とは、「被害者の父母(養父母含む)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)とし、その額は、請求権者1人の場合には550万円とし、2人の場合には650万円、3人以上の場合は750万円となっています。
なお、「被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円を加算する。」としっかり規定されています。

しかし、自賠責の死亡保険金額が3000万円であるため、自賠責保険2社以上に請求できる場合は別として、葬儀費、逸失利益と合わせても3000万円を超えることはありません。

死亡に至るまでの慰謝料等

損害賠償上、死亡に至るまでの傷害のための入・通院は別個の苦痛・不自由として、慰謝料が加算されますが、後遺障害慰謝料は、その障害に苦痛を受ける者が死亡してしまうため、長期間苦しんだ場合は別として、通常は加算されることはありません。

自賠責保険では、死亡に至るまでの傷害による損害は、傷害による損害として別で算定されますが、事故当日又は事故の翌日死亡の場合は、積極損害である診療費、治療関係費、文書料、その他の費用のみが認められるとの規定があります。
つまり、交通事故により亡くなった場合の、死亡に至るまでの入通院慰謝料が認定されるのは、死亡日が事故から2日後以降である場合となります。
休業損害についても同様です。

後遺障害による損害に対する保険金等の支払の後に、被害者が死亡した場合の死亡による損害については、事故と死亡との因果関係が認められるときには、その差額が認められます。

胎児の死亡による慰謝料

胎児を死産することは死亡とは言えないといった理由で、胎児本人に対する慰謝料は認めらません。あくまで、母親の傷害についての慰謝料の斟酌自由と考えられていますが、胎児が亡くなったことに対する母親への慰謝料として認められています。
そして母親に比べると例も少なく、認められたとしても少額ですが、父親に対しても慰謝料が認められている例もあります。

傾向としては、出産予定日に近づくにつれ高額となっている感じですが、週数が少ないと100万円程度から、出産間近でもせいぜい1000万円程度と少額な認定になっています。

死亡逸失利益

事故で亡くなったことによって、被害者が生前得ていた収入が無くなることに対する賠償です。
後遺障害により労働能力が100%失われた場合と似ていますが、被害者自身の生活費が不要となることから、生活費控除が行われる点が違います。

死亡逸失利益の算定方法は以下の通りです。

逸失利益

基礎収入額(年収)
×
(1-生活費控除率)
×
就労可能年数に対応するライプニッツ係数

それぞれの用語について解説します。

基礎収入

原則として事故前の収入を基礎とします。
現実の収入が賃金センサスの平均以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性を認められれば、賃金センサスを用いることができます。
若年労働者(概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則としています。

ここでいう収入は、労務の対価として被害者の財産に形成されるべきものであって、公序良俗違反の労務の対価は除外され、地代、家賃などの不動産収入や、利子、配当などは労務から発生するものとはされていません。

現在では、ほとんどの公的年金についても死亡逸失利益は認められていますが、遺族年金と恩給については、否定される方向で落ち着いているようです。

自賠責保険では、有職者の場合、事故前1年間の収入額と死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額を収入額とします。
ただし、35歳未満の若年者である場合は、事故前1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額、年齢別平均給与額の年相当額のうち1番高い額とし、事故前1年間の収入を立証することが困難な場合でも、同様に平均給与額は採用されます。
また、退職後1年を経過しない失業者(定年退職を除く)の場合は、退職前1年間の収入額と、全年齢、年齢別の平均給与額のうち1番高い額とします。

幼児・児童・生徒・学生などの未就労者は全年齢平均給額が採用され、家事従事者等で、58歳以上の場合は、年齢別平均給与額と全年齢平均給与額のうち低い額となりますが、これに該当するのは58歳と59歳の男性のみですので、主婦(女性)の場合は、年齢別平均給与額が採用されるということです。

上記に該当しない無職者の場合には、働く意思と能力があれば、年齢別平均給与額の年相当額となっていますが、全年齢平均給与額の年相当額が上限です。年金等の受給者についても死亡逸失利益は認められますが、無拠出性の福祉年金や遺族年金は含まれません。

生活費控除率

得られるべきであった収入のうち、生活をしていくのに必要な費用を控除して逸失利益を算定する手法が実務上、裁判例上では取られています。
この生活費をどの程度控除するかという問題が出てきますが、一定の基準が存在し、その基準は死亡慰謝料のように、一家の中でどういう立場であったかによって以下のように分けられています。

  • 一家の支柱 30%~40%(被扶養者の人数にも左右される)
  • 女性 30%~40%(主婦・独身・女児含む)
  • 男性単身者 50%(男児含む)

男性に比べ女性の控除率が低いのは、女性の平均給与が男性と比較して低いため、公平の観点から格差を是正しているためのようです。従って、女性でも男性以上の収入を得ている場合には、生活費控除率は上がることになると思われます。

生活費は必ずしも労働の対価から支払っているとは限らないため、それを立証できれば、基準に捉われない控除率が認められており、全く生活費が控除されていない裁判例もあります。

自賠責保険では、生活費の立証が困難な場合、被扶養者がいるときは年間収入額又は年相当額から35%を、被扶養者がいないときは年間収入額又は年相当額から50%を生活費として控除すると規定されています。

就労可能年数

就労の終期は、原則として67歳までとなっていますが、高齢者については、67歳までの年数と各年の簡易生命表の平均余命年数の2分の1のうち長い方となっており、男性54歳、女性49歳あたりから就労可能年数が67歳を超えてくる可能性があります。
一律に上記の基準どおりとすることには問題がありますが、高齢者の場合を除き、圧倒的多数で67歳を就労期間の終期としています。

被害者が就労年齢に達していない場合の就労の始期は、原則として18歳となっていますが、大学進学や卒業が確実視され、大卒平均賃金を基礎収入とする場合は、4年制であれば22歳からとなります。
就労可能年数が短くなっても基礎収入が上がりますので、大卒前提とする方が逸失利益額は高くなります。

自賠責保険の場合は、「就労可能年数とライプニッツ係数表」というものがあり、個々の事情に寄らず年齢により一律に就労可能年数が定められています。
年金の場合は、「平均余命年数とライプニッツ係数表」を使います。
どちらも、簡易生命表から算出するより微妙に低額になるような数値となっています。任意保険会社は通常この自賠責保険で規定している表を使用しています。

ライプニッツ係数

逸失利益とは将来発生する損害です。
長期間にわたり発生していく損害ですから、本来はただちに手に入らない金銭を手にすることになります。
これを使って利殖を行い、本来得られなかった利息を得られることになって不公平な結果となるといった理由で、中間利息を控除されます。

この中間利息を控除する方法は、複利(一定期間の利子も元金に加えて利息計算)で計算するライプニッツ式と 単利(元金だけの利息計算)で計算するホフマン式 とがあります。
これを簡単に計算できるように年数に応じた係数をあらかじめ算出しておき、この係数を掛けて中間利息後の金額を簡単に算出するようにしています。
このライプニッツ式の係数をライプニッツ係数といいます。
各年数に応じたライプニッツ係数はをご覧ください。

以前は、裁判実務において、交通事故の逸失利益の算定における中間利息の控除方法は、ライプニッツ式を採用することも、ホフマン式を採用することもありましたが、平成11年当時ライプニッツ式を採用していた東京地裁と同様の方式を採用すると、大阪地裁と名古屋地裁が決定(三地方裁判所の共同提言 平成11年11月22日)し、現在では特段の事情が無い限り、裁判でも、交通事故紛争処理センターでも、保険実務でもライプニッツ式で算定しています。

そして、中間利息控除の利率は年5%とほぼ決まっています。
現在の市場の利率から考えると不合理ではあるのですが、そのような最高裁判決(平成17年6月14日)があり、現状この利率を下げた請求は、まず認められないでしょう。

葬儀関係費用

150万円あたりが上限となっており、これ以上の支出があってもこの金額に限定される傾向があります。
立証を要さず基準額は認められることもあります。

この理由には、人により支出の程度がまちまちであるため、現実の支出額を損害と認めたのでは不公平となること、内容的に本来の葬儀費以外の接待飲食費が多く含まれていること、実際の葬儀の帳尻を考えると、香典収入などがあるため実際に遺族の負担となる金額は規準の近いものになると思われることなどからです。
しかし実務上、立証した実際の支出額が認められることもあります。

任意保険では、上限120万円あたりまでが多い感じです。

自賠責保険では葬儀費は60万円となっており、立証により100万円まで認められます。

墓碑建立費、仏壇・仏具購入費、香典返し

墓碑建立費、仏壇・仏具購入費も最高裁は認めており、判例の中には、これに従い、葬儀関係費用とは別個に、比較的高額な賠償を認めるものもありますが、実務の大勢としては、葬儀費用と一括し、あるいは分割する形をとったとしても、その合計額としては、葬儀関係費用のみが請求された場合と同程度の金額を認定する傾向にあります。

香典返しについては損害と認めない考えが定着しています。

任意保険でも認めてくることはありますが、その場合、慰謝料や逸失利益など他の損害が、認容可能額よりも大きく抑えられている傾向があります。
墓碑建立費などが請求どおり認められたとしても、総額としては低く抑えられているということです。

自賠責保険では、一切認められません。

 


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