事前認定と被害者請求


加害者の加入する任意保険会社が、自賠責保険からの支払い分もまとめて一括で被害者に支払うことを、「一括払い」といい、相手方が任意保険に加入していれば、ほぼ一括払対応となっています。この一括払対応をする任意保険会社を以後、「一括社」と呼びます。

一括社も後遺障害が何級であるのか分からなければ、被害者に示談金の提示ができません。

そこで、後遺障害の認定をする損害保険料率算出機構に事前に後遺障害が何級になるのか、等級認定を依頼するのです。

これを「事前認定」といいます。

中には、明らかに後遺障害が残っているような被害者の場合でも、後遺障害の話を出さず、事前認定もしないまま、示談書にサインを迫る悪質な例もあります。

また、後遺障害の話は出ますが、「傷害分(症状固定までの損害)だけ示談をすることもできます。そうすれば1週間程でご入金できますので、後遺障害については認定されたらまたお話しをしましょう。」といった保険会社からの提案もよくあります。

しかし、ここで保険会社の提案に乗る意味は、払い渋られた金額で傷害分の損害について示談してしまうことになりお薦めできません。

傷害分についても後遺障害が確定してから、じっくり話し合うべきです。

ある程度のまとまった金額が必要な状況であれば、後に説明するような方法もあります。また、自賠責保険の傷害分の枠120万円を使い切っていない状態でしたら、それも示談をせずとも請求することもできます。

通常は治療の打ち切り等の話が出れば、 一括社から症状固定や後遺障害診断などの説明があります。 そして、後遺障害診断書が送られてきて、主治医に記載して貰い、一括社に送り返せば、後は全て一括社で手続きを進めてくれ手間いらずです。

しかし、後遺障害の申請は、手間はかかりますが「被害者請求」でするべきです。

等級認定の妨害工作

事前認定も被害者請求も審査先は損害保険料率算出機構で同じですが、申請経路が違ってきます。

被害者請求の場合、被害者自身、若しくは弁護士や行政書士等が加害者の自賠責保険に請求し、そこから損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に請求書類一式が送られます。

 本来の請求形態はこれ なのですが、一括払いが主流である現在、被害者請求を行うパターンは、加害者が任意保険に加入していない場合や、被害者の過失が多く見込まれ一括対応にならなかった場合や、行政書士や弁護士が申請する場合などで、その割合はかなり少ないと思います。弁護士が介入しておきながら、何もせずに事前認定を行っているところもあります。

事前認定の場合は、加害者の任意保険会社が自賠責損害調査事務所に等級認定依頼をします。

このとき全体から見れば、あるいは一昔前に比べれば少数だとは思うのですが、高い等級が認定されにくく、あるいは認定されないように妨害工作が施されていることがあります。

異議申立の依頼を受けた場合に、そのようなことが発覚することがありましたが、 特に文句のつけようのない微妙なものから、明らかな妨害工作まで あり、一般の方ではこれを発見することはまず無理でしょう。このように妨害工作を未然に防ぐ観点から被害者請求にすべきというのが1つの理由です。

示談をせずに損害賠償金を先取り

2つ目の理由として、被害者請求の場合は後遺障害が認定されれば、認定された等級の自賠責の保険金(正確には保険金ではなく損害賠償額といいます。)が、 示談締結することなくすぐに受け取れます 

自賠責保険から受領する保険金は最低限のものですので、それを元手にじっくりとその後の相手方との交渉に臨むことができます。

しかし事前認定の場合は、等級が決まっても自賠責の保険金が支払われることはありません。

自賠責分もひっくるめて一括社が、あなたの損害は認定された後遺障害分も含めてこうなりますと示談額が提示され、 同時に免責証書(ようは示談書です)というものが 送られてき、それに「サインをして送り返せば、すぐに全額を支払います。」と言ってきます。

そして、このときの後遺障害分の提示額は自賠責保険から支払われる保険金分だけであることが大半です。それでも後遺障害による損害は高額になってきますので、「思っていたよりたくさん支払ってくれた。」と、そこで示談してしまうことも多いようです。

しかし、任意・自賠責保険一括払いをしているだけですので、一括社は1円も支払うことなく示談を締結させているということになります。

しかし事前認定の通知を受けてからでも、認定された等級の自賠責保険金を、被害者請求に切り替え、示談することなく受け取ることも可能です。

審査期間の違い

3つ目の理由は、結果が出るまでの期間の違いです。結論を言いますと 被害者請求の方が早く なってきます。これは既にいいました申請経路の違いによって起こってきます。

A.被害者請求
①被害者 ⇒ ②自賠責保険会社 ⇒ ③損保料率機構⇒ ④自賠責保険会社 ⇒ ⑤被害者

B.事前認定
①被害者 ⇒ ②一括社(任意保険会社)⇒ ③損保料率機構⇒ ④一括社(任意保険会社)⇒ ⑤被害者

上記A、Bで違ってくるところは、②と④の部分です。③の損保料率機構での所用期間については、AでもBでも同じのはずです。

まず②の違いですが、Aの場合は被害者が申請に必要なものを準備しての申請ですので、自賠責保険会社に受け付けられれば、③に行くまでそれ程時間はかかりません。

しかし、事前認定の場合、被害者が後遺障害診断書を一括社に送付してから、申請に必要なものを揃えます。これを、速やかに行ってくれればそんなに大きく違ってはこないはずですが、一括社の担当は一人で莫大な数の事故を担当していること、担当レベルで事務処理能力に違いがあること、顧問医の反対意見書待ち、意図的に遅らせているなど、理由はいくつも考えられますが、ここの期間が、異常に長期間である場合があります。

そして④の方は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所から帰ってきた結果を通知するだけですので、Aの場合は、即日から長くても1週間くらいのものです。しかし、Bはここでも長期間通、通知せずにいることがあります。

理由はやはり②の場合と同じように、一括社の担当は一人で莫大な数の事故を担当していること、担当レベルで事務処理能力に違いがあること、意図的に遅らせているなど、あとは後遺障害の認定結果の通知と同時に、示談案の提示をしてくるためであると思われます。

上司の承諾がいるなどの内部事情があるのかは知りませんが、この提示案もさっさと行えば、それ程日数がいるものではありません。

もちろん、調査事務所への申請も被害者への通知も速やかに行われている場合もありますが、 極端な例ですと②の方で1年以上、④の方で半年以上 かかっているような事例もありましたが、こうなってくるともう職務怠慢以外の何者でもありません。

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