交通事故で請求できる損害のうち、傷害(入通院)による損害について、どのようなものが請求できるのかをまとめました。
ただ、自賠責保険で請求できるものと、法律上請求可能なものとではイコールではありません。
●それ以外の損害についてはコチラをご覧ください。
⇒ 後遺障害が残ったことで請求できる損害
⇒ 死亡による損害
⇒ 車両に関する損害
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傷害慰謝料とはケガを負って、入通院をしたことに対する慰謝料のことで入通院慰謝料とも言います。慰謝料とは、精神的な損害に対する賠償です。
後遺症に対する慰謝料は、後遺障害慰謝料として、傷害慰謝料とは別扱いの損害になります。
傷害慰謝料は、入通院慰謝料とも表現され、算定方法は治療期間・入院期間・通院日数等が大きく関連してきます。
治療の期間や日数が関係するということは、通常、ケガがどんなに酷くても病院等で治療しなければ算定されず、安静にしているだけで治りそうなケガでも、病院通いを続ければ多く算定されるといった矛盾があります。
交通事故の慰謝料には、裁判上の基準、任意保険の基準、自賠責保険の基準と、大きく3通りの基準があります。
同じ事故の同じ人に対する慰謝料に、物差しがいくつもあることが、ややこしく、おかしな話なのですが、実際そのようになっており、細かく分けるともっとたくさんの基準が存在します。
その基準を基にして妥当な額を決めていくことになります。
裁判上の基準は、基本的に 入通院期間と症状の重篤さ によります。
3つの基準では一番高額になることがほとんどですが、この基準も大きく分けて3種類あり、またその基準をどう適用していくかによって額は大きく変わります。
任意保険の基準も、基本的に入・通院期間と症状の重篤さによります。
裁判基準と自賠責基準の中間の額であることが多いですが、通院3ヶ月程までであれば、2日に1回以上通院している場合の、自賠責基準とほぼ一緒で、それ以降は、自賠責基準での算定の方が高額になってくる場合もあります。
しかし、 任意保険の基準はあって無いようなもの で、自賠責基準での算定が低ければその額を、任意保険基準での算定が低ければその額を提示してくることが大半です。
しかし、 自賠責保険からの支払額を下回ってはいけない といった規定があります。
自賠責の基準は、治療期間×4200円、または実治療日数×2×4200円のうち少ない方が認定されます。
治療期間は、治療中止の場合は7日プラスする、長管骨等にギプスを装着している期間は実治療日数に含む、あんま・マッサージ・針・灸・指圧は実治療日数を2倍しないなど、細かな取り決めもあります。
裁判基準も任意保険基準も、期間が長くなるにつれて、1日あたりの慰謝料額は少なくなっていきますが、自賠責保険だけは違います。受傷直後でも、受傷1年後でも1日あたりの慰謝料額に違いはないのです。
ただし、120万円の限度額がありますので、そこまで長期間の入・通院になる前に、限度額を超えてしまうことがほとんどです。
しかし、請求できる自賠責保険が複数ある場合は、状況によっては、裁判基準により算定された慰謝料よりも、高額の支払いが実施されるパターンもあります。
●後遺障害に認定されれば、傷害慰謝料だけでなく後遺障害慰謝料、それに逸失利益といった損害が追加される事になります。
特に画像上異常がないと言われいる方でも、症状が治りきらなければ14級認定の可能性はあります。
⇒ むち打ちでも!腰痛でも!後遺障害14級は獲れるんです!
交通事故でケガをしたことにより、会社を休んだような場合に、給料が支払わなければ請求できる損害です。休業補償と呼ぶ人が多いです。
もちろん会社を休んでも、給料が出れば、損害は発生していませんので、請求できません。
そして、会社を休んで給料が出ていなくても、 休業の必要性が無ければ、損害として認定されません 。
しかし、給料が出なかった場合も、有給休暇を使用した場合も、休業の必要性がなくてはなりません。
会社員に限らず、パートでもアルバイトでも当然に請求できます。
自営業者の場合も、もちろん請求できますが、損害額や収入額の立証に苦労する場合もあります。
専業主婦であっても、休業損害は当然に請求できます 。主婦業は大変な仕事ですからね。
また、パート兼主婦の場合でももちろん請求可能なのですが、ある程度高給でない限り、主婦としての請求で、パートでのお給料以上の休業損害が請求できます。
自賠責保険では、1日当たりの損害額は原則5700円ですが、それ以上の収入を立証できれば、1つの自賠責保険につき1万9000円まで認定されます。
応急手当費、診察料、入院料、投薬料、手術料、処理料等、基本的には実費全額を請求できるものです。
診断書や診療報酬明細書(レセプト)の費用も請求できます。
しかし、必要性や相当性が無いと判断されれば、支払われないこともあります。
必要性や相当性が無い場合とは、過剰診療や高額診療などが例にあげられます。
過剰診療とは診療内容の必要性や合理性が否定されるもの。
高額診療とは病院側の問題ですが、自由診療で、その診療に対する報酬が一般の水準にくらべ著しく高い場合などです。
整骨院や鍼灸院での治療は、医師の指示が必要と言われることがあります。
医師に指示があるにこしたことはありませんが、東洋医学に否定的な医師も少なくありませんので、「必要ない」と言われてしまうことが普通でしょう。
しかし、必要性があるものなら 医師の指示がなくても認められます 。
カイロプラクティックや中国整体などは、自賠責保険では100%認定されませんが、示談交渉上ではある程度は認められることもあります。
病院以外での施術が必要な場合は、後の損害賠償でどう影響してくるのかを考慮し、事前に対策を立てておくべきでしょう。
入院中の特別室の使用料です。
基本的には、損害として認められませんが、医師の指示がある場合、症状が重篤な場合、空室がそこしかなかった場合などは、認められます。
療養をかねた温泉旅行などは、当然認められません。
医師の指示があり、傷害の部位、程度による必要性、治療上の効果等により客観的に有効かつ相当と認められる範囲については、認められることもありますが、その額は制限される傾向です。
交通事故のケガには症状固定といった概念がありますが、それ以降の治療費のことです。症状固定後も通院を続けることは一般的によくあることです。
ただ、後遺障害の慰謝料で斟酌する考え方が一般的で、原則的としては認められません。
しかし、内容、程度により、症状の悪化を防ぐなどの必要があれば認められることもあります。
自賠責保険では対象外で、全く認められません。
まだ現実には手術も治療も受けていない、これから先の手術費や治療費のことです。
手術などは、医師がいつ頃、どのような手術が必要か明言していれば、認められることが多いです。
治療費についても、期間や費用が具体的に予測できる方が、認められやすい傾向ですが、よほどの必要性がないと認められにくいでしょう。
自賠責保険では対象外となります。
入院付添費と通院付添費、自宅療養中の付添費などがあります。
もちろん付添いの必要性がある場合に限られます。
必要性とは、医師の指示・受傷の程度・被害者の年齢等で考慮します。
職業付添人を雇った場合は、その実費が損失となります。
近親者が付き添った場合は、裁判例で見ると5500円~7000円くらいのようですが、付き添った近親者の収入を考慮して、額を決めることが多いです。
自賠責保険では、入院付添費は、看護料として原則12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合に、1日につき4100円が認められます。
通院看護料、自宅看護料は、医師が近親者等の付き添いの必要性を認めた場合、1日につき2050円ですが、12歳以下の子供の通院等の付き添いの場合は、医師の証明は必要ありません。
入院中は、日用雑貨品や電話代、テレビカード代、家族の通院交通費など、治療費以外の支出も出てきますが、それら諸雑費をひとつひとつ立証するのは、金額が少ない上に、煩雑であることから、裁判上では、1日あたり1400円~1600円程にほぼ定額化されています。
しかし、基準を超える額を具体的に主張立証し、交通事故の損害をして認定されれば別です。
通院雑費もその支出が、やむを得ない場合は認められることもあります。
任意保険等は、1100円の認定とすることがほとんどです。
自賠責保険では、入院中の諸雑費として、1日あたり1100円の認定です。
ここでも、立証資料により、必要かつ妥当な実費であれば認定されます。
通院または自宅療養中の諸雑費も立証により認定可能です。
現実に支出した交通費については、原則的に、全額損害として認められます。
この原則というのは、その交通機関を利用することが相当であればということです。
例えば、むち打ちや軽い打撲などでタクシーを利用したところで、その全額が損害として認められるわけではりあません。
症状などによりタクシー利用が相当とされる場合以外は、電車、バス等、公共交通機関の料金以上は認められません。
自家用車を利用した場合は実費相当額として、現在のガソリン価格から考えると不当に低い設定ですが、1kmあたり15円の認定が多いです。
有料道路代や駐車場代も請求できます。
タクシー利用が認められる可能性の高いのは、以下のような場合です。
症状、治療内容などを考慮し、社会的に相当な範囲で認められます。
なお、見舞い客に対する接待費、快気祝等は道義上の出費であるからといった理由で認められません。
任意保険にある人身傷害保険では、快気祝いの費用について、限度がありますが支給されることはあります。
学習費・通学付添費は、被害者が就学中の児童、学生本人である場合に生じる可能性のある損害です。
保育・監護費は、監護者(親など)自身が事故で受傷したり、あるいは受傷した被害者の付添監護のために、その子供等の保育・監護ができなくなったことにより、第三者に保育・監護を依頼した場合の実費もしくは保育・監護費相当額が認められます。
その他、入学金の損害、進級遅れの場合の授業料、補習費、家庭教師の謝礼やアパートの賃料の延長分なども認められることがあります。
治療中、治療のために必要な器具や、後遺症が残ったとき、身体機能を補うための器具は、被害者の受傷の部位、程度等を考慮して、必要があれば相当な範囲でその費用を請求できます。
例えば、車椅子、補装具、補聴器、眼鏡、コンタクトレンズ、かつら、入れ歯、差し歯、義手、義足、義眼、身体障害者用パソコンなどです。
これらは、物損のように思われがちですが、傷害による損害として請求できます。
購入したときから事故時までの期間により、減価償却されることが多いです。
自賠責保険では、眼鏡・コンタクトレンズについては、消費税を含み5万4000円が上限です。
損害賠償の請求を行うためには、様々な出費が必要になることが多くあります。
通常考えられるものとして、以下のようなものがありますが、全てが認められるわけではなく、やはり、「必要かつ相当な範囲」かどうかが問題となります。
ア.損害立証のための資料の取得費用
診断書、診療報酬明細書(レセプト)、意見書、X-P・MRIなどの画像のコピー代、その他の証明書類などが考えられます。
診断書やレセプトの発行費用は、通常レセプトに計上されていますので、症状固定前のものであれば、治療関係費として処理されます。
保険実務でも認められている費目であり、原則的には認められるものです。
しかし、通常行われるような書類の取付けの範囲を超えるものや、私的鑑定の場合は、立証に対する寄与の程度、代替手段の有無、立証の困難さ等から、個別具体的に判断されます。
イ.加害者側との交渉や保険金の請求に要する、電話代・切手代等の通信費など
認められることもあれば、そうでないことも多々あります。
当事者間の意見が食い違うことは珍しくなく、交渉が長期化したときに、そのための費用をどこまで加害者に負担させてよいかは微妙な問題があります。
自己の権利確保のためのコストをある程度負担することはやむを得ない面もありますが、当事者が遠隔地に住んでいるとか、加害者の態度が常軌を逸しており、通常は不必要な交渉の負担を被害者が負ったときなどには認められる場合があり得ます。
ウ.事故原因および損害の把握のために必要な交通費、事故発生地が遠隔地である場合の現地滞在宿泊費等
事故原因や損害の把握のための調査に若干の費用と労力を要することは推測できますが、それを加害者に負担させることは困難であることも多いです。
しかし、遠隔地の場合には、その必要性は強くなり、認められる可能性も高くなります。
エ.自賠責保険請求に必要な文書料
交通事故証明書、被害者の印鑑証明書、住民票等の発行費用です。
自賠責保険に必要なものですので、領収書を添付することで請求できます。
交通事故証明書は自賠責保険の請求に必ず要りますが、加害者側の任意保険会社(一括会社)が交渉窓口であった場合は、必ず事故後に取り付けています。
一括会社を通さず、直接、自賠責保険に被害者請求をすることにした場合は、一括会社に原本証明をしたコピーを送るように頼みます。
診断書やレセプトについても同様です。
保険会社から送ってもらう場合には、 必ず原本確認印を 押すように依頼しましょう。