後遺障害が2つ以上残った場合、「併合」という言葉が出てきます。
「併合」とは、系列が違う後遺障害が2つ以上ある場合に、1番重い等級を1級~3級繰り上げるか、重い方の等級にし、複数の後遺障害に対する等級にすることです。
つまり、 複数の後遺障害が認定されても最終的な等級は1つに なります。
併合の方法にはルールがあります。
等級繰り上げのルールは以下のようになっています。
●13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 一番重い等級を1等級繰り上げ
●8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 一番重い等級を2等級繰り上げ
●5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 一番重い等級を3等級繰り上げ
※全てが基本ルールどおりなるわけではありません
上記には後遺障害が認定される中で最も多い14級の扱いがありませんが、14級はいくつあっても14級のままで等級が繰り上げられることはありません。
しかし、併合14級という取り扱いになります。
複数のケガの症状が残っていて、そのうちの一つでも14級に認められると、確かに症状は残ってても、これは後遺障害としては認められる事はないだろうというものが、何故だか金太郎飴式に14級に認められることがあります。
これは、14級がいくつあっても14級のままであることと、後に説明する加重を考慮しての、あくどい認定の実態ではないかと勘ぐってしまいます。
①14級と14級と14級
⇒ 併合14級(14級がいくつあっても14級)
②14級と12級
⇒ 併合12級(14級は等級繰り上げに影響しない)
③12級と10級
⇒ 併合9級(13級以上が2つあるので、重い等級の10級を1級繰り上げ)
④13級と9級と9級
⇒ 併合8級(13級以上が2つ以上あるので、一番重い9級を1級繰り上げ)
⑤7級と7級
⇒ 併合5級(8級以上が2つあるので、7級を2級繰り上げ)
⑥12級と8級と6級
⇒ 併合4級(8級以上が2つあるので、重い方の6級を2級繰り上げ)
⑦5級と4級
⇒ 併合1級(5級以上が2つあるので、重い方の4級を3級繰り上げ)
⑧8級と5級と2級
⇒ 併合1級(5級以上が2つあるので、重い方の2級を3級繰り上げることになるが、1級以上は無いため1級)
注意しなければならないのは、13級以上の後遺障害が2つ以上あれば、何でもかんでも併合されて等級が繰り上がるのかというと、そうでは無いということです。
「系列が違う後遺障害が2つ以上ある場合に、1番重い等級を1級~3級繰り上げるか、重い方の等級にし・・・・」と冒頭に記載しましたが、繰り上げることなく単にそのうちの一番重たい等級に認定される場合もあるのです。
例1)
片手を手関節以上で失い(第5級4号)、同側の腕の上腕骨に癒合不全(第7級9号)を残した場合は、併合ルールどおり繰り上げると第3級となりますが、肘関節以上を失った4級4号よりも、障害の状態は軽いため、5級になります。
例2)
片側の肩関節と肘関節の用を廃し(6級6号)、同じ側の親指と人差し指の用を廃した(9級13号)場合は、併合ルールどおり繰り上げると5級になりますが、「1上肢の用を全廃したもの」(5級6号)より障害の状態は軽いため、6級になります。
例)
左右の上肢の用を全廃した場合、右上肢の用を全廃したもの(5級6号)と左上肢の用を全廃したもの(5級6号)を併合するのではなく、等級表に定められた「両上肢の用を全廃したもの」(1級6号)になります。
例)
片足の脛骨に偽関節を残し(8級9号)、同側の足が1cm以上短縮し(13級8号)、更に同部位の知覚異常や疼痛がある(12級13号)場合、派生関係にある3つの後遺障害の最上位等級である8級9号になります。
併合前のそれぞれの等級の保険金の合計と併合によって繰り上げられた等級の保険金を比較して、少ないほうの金額が保険金となります。
従って、同じ等級であっても、単一での等級と併合等級では、保険金が違ってくる場合があります。
例1)
12級と13級で併合11級になった場合
12級(224万円)+13級(139万円)=363万円
11級=331万円
この場合、11級の方が低額のため、保険金額は331万円となります。
例2)
3級と11級で併合2級になった場合
3級(2219万円)+11級(331万円)=2550万円
2級=2590万円
この場合、3級と11級の保険金の合算の方が低額のため、保険金額は2級の2590万円ではなく、その合算額である2550万円となります。