自賠責保険だけで、裁判で完全勝利するよりも高額の賠償を受けられる場合があります


 

最大の賠償を得る方法はやはり裁判なのでしょうか?
 

いえ、必ずしもそうではありません。
 

複数の自賠責保険への請求(共同不法行為)

自賠責保険(自動車損害賠償保障保険)とは、交通事故被害者が泣き寝入りすることなく、最低限の保障を受けられるようにといった目的で国が始めた保険制度です。
 

最低限の保障ですので、損害をカバーしきれない事がしばしばあり、任意保険というものが上積保険として存在しています。

しかし、任意保険が支払をする場合でも、裁判によって決着が付けられることもあります。
 

訴訟に発展した場合、任意保険会社の提示する賠償額よりも相当高額になることが大半です。

しかし、そのような裁判をするよりも高額な賠償を自賠責保険から受けることが、可能な場合が、実際にあるのです。

そのような可能性があるのは、事故が以下のような場合です。

1.3台以上の車による事故で負傷した場合

2.2台の車による事故でも、負傷者が運転者では無い場合

3.歩行者や自転車で、2台以上の車が絡む事故で負傷した場合

4.被害者の過失が大きくなる事故の場合

これは、どういうことか説明します。
 

自賠責保険は、過失のある車に付保されている自賠責保険全てに請求が可能となります。

その場合の1人の自賠責保険の限度額は、単純に台数分の合計となります。
 

つまり、法律用語で言えば、共同不法行為により事故受傷した場合は、 複数の自賠責保険に請求可能 となるのです。
 

限度額とは保険金額のことで、傷害による損害(治療費・休業損害・入通院に対する慰謝料など)が120万円、後遺障害による損害(後遺障害慰謝料・逸失利益など)は各等級により設定され、75万円~4000万円、死亡による損害(慰謝料・逸失利益・葬祭費など)は3000万円です。

但し、算定された損害額が保険金額以下の場合は、その損害額が支給されます。
 

もちろん、複数台の事故であっても、1台にしか過失がなければ、1件しか請求できません。

2台のみの車による事故でも、被害者が運転者ではなく同乗者であれば、2件の自賠責保険に請求可能な場合があります。

乗っていた車を運転していた人に、ほんの少しでも過失のある場合は、同乗者は、相手車だけでなく、乗っていた車の自賠責保険にも請求可能となるのです。
 

この過失の有無の判断は、損害保険料率算出機構という機関の、自動車損害調査事務所というところが行います。

相手方の 保険会社の言い分は関係ありません 
 

しかし、自賠責保険の支払対象は、あくまでも事故によって負傷した他人となっています。

従って、同乗者であっても、他人性が認められなければなりません。
 

この場合の他人かどうかは、家族、友人、会社の従業員であるか等は関係ありません。
 

とても、ややこしい話ですが、「他人」とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)及び運転者以外のものを指す。」(最高裁昭42・9・29判決)とされており、「運行供用者」とは、事故を起こした車についての「運行支配」と「運行利益」が帰属する者をいうとしています。
 

この運行供用者かどうかの判断は非常に難しい場合もありますが、例えば、車の持ち主は、通常、運行供用者となり他人性は認められません。

例えば長距離のドライブなどに行き、帰りは疲れたので同乗者に運転を代わってもらったような場合、その車の持ち主は運転していなくても他人性は認められず、その車の自賠責保険には請求不可能となります。
 

運転者はもちろん他人ではありませんので、1対1の車同士の事故であれば、請求できるのは、相手車の自賠責保険だけとなります。
 

裁判で完全勝利するよりも高額の賠償を受けられる場合①

1で述べたように、例え自賠責保険を複数請求でき、その保険金額が2倍、3倍となったとしても、算定された損害額が保険金額以下の場合は、その損害額しか支給されません。
 

そして、自賠責保険は多数の被害者に対し、簡易迅速かつ公平に保険給付を行うため、その算定方法は、ある程度定型化されており、最低保障的な性質が強いものです。
 

それでは、裁判をするより高額の賠償など、到底受けれそうにありません。

しかし、ケガの内容や過失によっては、そのようなことが、実際にあるのです。
 

それは、認定された後遺障害が以下のような場合が代表例です。

1.14級 9号、12級13号、などの神経症状である場合
2. 7級12号、 9級16号、12級14号などの醜状障害である場合

(上記等級は、平成22年6月10日以降に発生した事故の場合)

その理由を説明します。
 

後遺障害が残ったことによって、請求できる損害の主軸に、後遺障害逸失利益という損害があります。

本件のポイントは、自賠責保険と裁判実務等の後遺障害逸失利益の算定方法に大きな違いがあることです。
 

逸失利益とは簡単に言うと、後遺症が残ったことにより働く能力が減少し、将来得られるはずの収入が減少するという考えによって、発生する損害です。
 

後遺障害とは、意味的には一生涯つづくものです。

従って、本来就労可能な期間についての逸失利益が請求でき、そして認められ得ます。

しかし、上記にあげたような後遺障害については、そのように認められることは稀なのです。
 

何故かと言うと、まず、 神経症状の労働能力喪失期間については裁判上でも12級で5年から10年程度、14級では5年以下に制限 されてしまうことが大半です。

これは、むち打ち症の場合に、より顕著で、ある程度の期間で症状は、回復するといったような意味合いからです。
 

後遺障害が残っていると認定されたのに、症状が回復するというのは矛盾する話なのですが、実際、後遺障害が認定されても、その後、症状が回復あるいは、完全に回復はしていなくても、働くことに支障が無くなるまでに回復することは、14級の神経症状では、よくある話です。
 

逆に考えれば障害内容によりますが、後遺障害に認定されたからといって、必ず一生涯続くかと言うと、そうでは無いということです。
 

そして醜状障害の場合は、その 状態や職業等 にもよりますが、逸失利益が 完全に否定されることも あります。

認められるには、緻密な立証が必要となってきます。
 

これは、傷あとが残っても働く能力には影響しないといった考えです。

この考え方も、腑に落ちない点がありますが、認められない場合は、慰謝料で斟酌(慰謝料に上乗せするようなこと)されることとなり、逸失利益が認められるよりは、格段に低額な賠償となります。
 

また、逸失利益が認められても期間を制限されたり、労働能力の喪失率が同等級の他の後遺障害よりも少なめに見られることが通常です。

醜状障害でなくとも被害者の職種に照らして、収入が減少しないことが明らかであれば、逸失利益が否定されることもあります。
 

年齢や収入などにもよりますが、逸失利益が認められる場合、損害のかなりのウエイトを占めることになるのですが、後遺障害の内容によっては、上記の通り、認められなかったり、制限されることがあるのです。
 

しかし、自賠責保険の算定基準は既に述べたように、簡易迅速かつ公平に保険給付を行うため、個々の事情に余り捉われることなく定型化しています。

 神経症状であろうと、醜状障害であろうと、収入の減少が無かろうと、67歳までの労働能力喪失期間が認められる のです。
 

しかし、自賠責保険には限度額が設定されており、算定金額が丸々給付されることは、ある程度ご高齢の方でなければあり得ません。

ところが複数の自賠責保険に請求することが出来る場合は、その限度額は倍々になり、裁判上で認められ得る賠償額よりも高額な給付となることがあるのです。
 

全損害中の逸失利益のウエイトは非常に高いため、その他の損害が自賠責基準による低い算定であっても、裁判で完全勝利するよりも高額な賠償を受けられる場合があるのです。
 

そして、金額だけの問題でなく、煩わしい示談交渉や裁判などをすることなく、簡易迅速に納得の行く妥当な損害賠償額以上の賠償を得ることができるかもしれません。
 

裁判で完全勝利するよりも高額の賠償を受けられる場合②

もう一つのパターンに被害者の過失相殺率が影響してくることがあります。

該当するのは、 被害者に過失がある程度ある場合 です。
 

この理由は、保険会社との示談交渉や裁判などでは、ケガをした人に過失がある場合、その過失分を差し引いた金額が賠償されることになります。
 

例えば、被害者の損害が全てで1000万円であって、その被害者に60%の過失があると認定されれば、被害者への支払いは60%減額された400万円になるということです。

過失相殺については、皆さんご存知の方が多いと思います。
 

しかし、自賠責保険の過失の運用は、かなり違ってきます。

自賠責保険は、被害者救済の意味で過失の割合をそのまま賠償額に反映されず、以下の表のようになります。
 

自賠責上の被害者の過失割合後遺障害又は死亡による損害の減額割合傷害による損害の減額割合
7割未満
減額なし
7割以上8割未満
2割減額
2割減額
8割以上9割未満
3割減額
9割以上10割未満
5割減額

後遺障害が残った事故や死亡事故の場合、損害賠償額の大半は後遺障害や死亡に関する損害です。

その場合、 過失が70%より少なければ、自賠責上では1円たりとも減額されることはありません 

そして、70%以上90%未満で、20~30%の減額です。
 

後遺障害の内容との関係もありますので、案件ごとの厳密な算定はもちろん必要ですが、この過失割合による減額方法の違いから、そこそこの過失が見込まれる被害者の方は、裁判で完全勝利するより、高額の賠償を得られる可能性が出てきます。

いずれにしても、後遺障害に認められる事が先決です。

むち打ちなどで、後遺障害の認定など無理を言われていても、治りきらないのであれば可能性は十分にあります。

むち打ちでも腰痛でも後遺障害14級の認定は可能です。
 

事故時点の注意

話は戻りますが、複数の自賠責保険に請求できる事故に、駐車車両などが影響した場合があります。
 

例え事故当時、駐車車両の運転者がいなくても、その車両が事故に影響を及ぼしているような場合は、共同不法行為者となる可能性がありますので、実況見分時などに、しっかり警察官に伝えてください。
 

後々、大変助かることに、なるかもしれません。
 


このサイト内を検索
ご挨拶

事務所代表

●画像タイトル

アチーブ行政書士事務所は平成16年3月、非常に珍しい交通事故専門の事務所としてスタートしました。
続きを読む

 
Back to Top ↑