高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害には、脳に器質的な損傷が有る場合と無い場合があります。
器質的損傷が無い場合とは、心因性などによる場合です。

ここでは器質的脳損傷がある場合(分かりにくい場合も含む)の高次脳機能障害について書いていきます。

局在性脳損傷による高次脳機能障害の症状

局在性脳損傷の場合の高次脳機能障害の症状は、脳の損傷した部位の機能が障害されて発生します。これを巣症状(そうしょうじょう)といいます。

局在性脳損傷による高次脳機能障害の場合、受傷後の意識障害が有る場合も無い場合もありますが、脳損傷が画像所見で認められます。ただし、受傷直後ははっきりしていたものも 時間の経過とともに分かり難く なってきます。

失語

「話す、聞く、読む、書く」などの障害です。

他人が伝えてきたことを理解することが困難で、認知症とも症状は類似しますが、認知症は大脳機能全体の低下であるのに対し、失語症は言語機能に限られた障害です。

失語には運動性失語と感覚性失語があります。

運動性失語

優位半球の前頭葉の運動性言語領域で起こる失語は「ブローカー失語(運動性失語)」と言われます。
言葉を理解は出来ますが、うまく話すことが出来ません。

感覚性失語

優位半球の側頭葉の感覚性言語領域で起こる失語は「ウェルニッケ失語(感覚性失語)」と言われます。
言葉は聞こえても理解できません。話し方は一見普通に見えるのですが、言葉の間違い、内容の間違いが多くなります。

この両方を損傷すると、話すことも、読み書きすることも、言葉を理解することもできなくなり、これを全失語といいます。しかし言葉を介さない意思疎通は可能です。

失行

手足の麻痺などはないのに運動がちゃんと出来なくなる障害です。意図した動作が難しく、出来るときと出来ないときの波があります。

失行には運動失行、観念性失行、着衣失行などがあります。

運動失行

前頭葉の運動野前域の障害で起こり、今まで出来ていた巧みな運動が出来なくなります。
動作が下手になり、ボタンをかける、手袋をはめるなどの動作がぎこちなくなります。

観念性失行

脳の広範囲の障害で起こり、物事を理解して手順よく動作することが出来なくなります。
単純な動作を自分からは出来ても、命令による動作は難しくなります。特に道具を使用する際に異常が現れ、例えばタバコとライターを渡してもその関係性が分からないため道具を使えません。

着衣失行

非優位半球の前頭葉連合野前の部分の障害で起こります。
体の半分を無視するので、服を着ることが難しくなります。

失認

各々の一次感覚野の上の二次感覚野の障害です。
知っていたことも理解出来なくなり、感覚情報が脳に伝わっても過去の記憶を照らし合わせて判断することが出来ません。

失認には視覚失認、視空間失認、聴覚失認、触覚失認、半側身体失認などがあります。

視覚失認

視力や知能に問題はないものの、見ただけではそれが何であるか分からないのですが、音を聞いたり別の感覚を使うと何であるのかが分かります。

視空間失認

空間における物の位置関係が分からなくなります。
マスメディアなどでも最近は耳にすることも増えてきた「半側空間無視(はんそくくうかんむし)」では、視空間の半分にある物を無視してしまい、無視した側の障害物にぶつかったり、無視した側の食べ物に気づかず残したり、絵を描けば無視した側を描かなかったりします。

聴覚失認

音は聞こえるのですが、その意味や内容が理解出来ません。

触覚失認

感覚の障害はありませんが、手で触れたものなどが何であるのか理解できません。

半側身体失認

優位半球の損傷の場合は、体のある部分での感覚が認知できなくなったり、体の左右が分からなくなったりします。
非優位半球の損傷の場合は、体半分を無視して麻痺を認めなかったりします。

記憶障害

覚えられずにすぐ忘れ、同じ事を何度も質問し、何度も話しますが、本人は自分の記憶力が落ちているとは自覚しません。作り話をする作話も見られます。
記憶を担う脳の部位は、はっきりしていません。頭部外傷では側頭部内側底部の海馬領域、海馬との交通遮断による記憶障害があげられます。

地誌的障害

非優位半球の頭頂葉連合野で生じます。
もの忘れなどの症状はないのに、よく知っているはずの場所で道が分からなくなってしまい、自宅に戻れなくなったりします。新しい道順を覚えるのは困難です。自宅内でトイレに行くのに迷ったりすることもあります。

遂行機能障害

遂行機能とは、実生活において何かをしようとする時に必要な能力です。具体的には「目標の設定、計画、計画の実行、順序経った効果的な行動」の4つの要素が必要とされます。遂行機能が障害されると、指示がなくては行動できなくなり自分からは動かなくなります。また、計画無しの行き当たりばったりの行動をし、上手くいかないときの修正をすることも出来ません。

前頭葉の損傷で遂行機能は目立って障害されますが、物事の遂行には様々な機能が必要ですので、前頭葉だけの巣症状とは言い切れません。

注意障害

上部脳幹から大脳辺縁系、前頭葉にかけて関係すると言われています。
注意力を持続できなくなり、作業が長続きしません。また、同時に複数の事をこなせなくなり、難しい事は出来ず、ミスも多くなります。

情動や人格の障害

前頭葉の前頭穹隆部(ぜんとうきゅうりゅうぶ)の障害で、情動面ではうつ病のような状態になり、人格面では無感動、愛情喪失、感情の平坦化などを来します。

前頭葉の前頭眼窩部(ぜんとうがんかぶ)の障害では、抑制が利かなくなる脱抑制や易怒性の躁状態が生じます。人格面では人格や知性の低下、道徳や社会性の低下が生じます。社会性の低下とは、場所や相手に関係なくふざけたり、初対面の人に馴れ馴れしくしたり、興奮すると感情を抑えきれずに怒りだして暴力を振るうこともあり、周囲の人は苦慮します。

前頭葉の後部の帯状回前部病変では無感情が生じ、重症になると食事や排泄なども自ら行おうとしなくなります。

前頭葉の障害は、本人が自覚していないことも大きな問題で、周囲の人には大きなストレスを与えます。

びまん性脳損傷による高次脳機能障害の症状

びまん性脳損傷による高次脳機能障害は、上記の 局在性脳損傷と違って脳の損傷部位がはっきりしません 。広い領域にわたって神経の軸索が損傷している状態で、画像所見での確認は難しくなります。

びまん性脳損傷との診断には、受傷直後に一定レベル以上の意識障害が必要となってきます。

びまん性脳損傷による高次脳機能障害には、局在性脳損傷が合併している場合もありますが、急性期には局在性の脳の損傷が認められなくても、3ヶ月ほど後には脳質が拡大し、脳が萎縮してくることがあります。

びまん性脳損傷は、広い領域にわたっての神経の軸索損傷ですので、その症状も多岐に亘り、以下のような症状を「自賠責保険・高次脳機能障害認定システム」では挙げています。

認知障害

  • 記憶・記銘力障害
  • 集中力障害
  • 遂行機能障害
  • 判断力低下
  • 病識欠落
  • 行動障害

  • 新しいことを学習できない
  • 複数の仕事を並行して処理できない
  • 行動を計画し実行することができない
  • 周囲の状況に合わせた適切な行動ができない
  • 危険を予測・察知できない
  • 人格変化

  • 感情易変
  • 不機嫌
  • 攻撃性
  • 暴言・暴力
  • 幼稚
  • 羞恥心の低下
  • 多弁(饒舌)
  • 自発性・活動性の低下
  • 病的嫉妬・ねたみ
  • 被害妄想

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