意識障害の有無と程度

 

自賠責保険で高次脳機能障害による後遺障害の認定を受けるには超えておかなければならないハードルがいくつかあります。

ここでは、その一歩目である意識障害について書いていきたいと思います。

頭部外傷の診断

高次脳機能障害が問題となるような重篤な症状の場合、初診時には急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、びまん性脳損傷、びまん性軸索損傷といった傷病名が上がっていることが通常です。

しかし、上記のような診断が必ずしも必要かというと、100%そうではありません。

ただ、初診時に全く頭部外傷に関する診断がない場合は、自賠責保険上での高次脳機能障害の認定はほぼ不可能なのではないかと思われます。
 

意識障害の有無とその程度が大問題

高次脳機能障害は脳の障害です。

事故受傷時に頭を強く打つことで、脳実質を損傷したり、血腫が出来たり、脳が頭蓋内で揺れたりして、多かれ少なかれ意識障害が起こります。

しかし、初診時に頭部外傷の診断がない場合、あるいはあっても受傷時に意識障害が無いような場合は、例え頭を打っていたとしても、それほど強い衝撃を受けていない、つまり高次脳機能障害が残るような衝撃を受けていないという風に見られてしまいます。
 

意識障害といっても様々です。
全く何をしても反応の返ってこない状態も、なんとなくボーッとしている感じがするくらいの状態でも意識障害と言えます。

自賠責は「 脳外傷において外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するケース  健忘症あるいは軽症意識障害が1週間以上続くようなケース 」に、高次脳機能障害が残ることが多いとしています。

ここで言う意識障害や軽症意識障害とは、以下のような状態を指します。

● 意識障害
昏睡~半昏睡で、刺激により開眼しない程度
JCSが3桁、GCSが8点以下が目安

● 軽度意識障害
JCSが2~1桁、GCSが13~14点が1週間以上続く

● 健忘症

記憶障害の一種で、記憶の喪失が比較的限られた事項や一定の期間に限定されて現れるもの。広範囲にわたって全般的に生じる記憶の低下や記憶減弱とは区別される

意識障害の評価

意識障害の程度で先ほど、JCS、GCSという言葉が出てきました。
これを簡単にご紹介しておきます。

JCSもGCSも意識障害の評価に医療機関で使われています。

JCS(ジャパンコーマスケール)

JCSはジャパン・コーマ・スケールの略で、日本の医療機関でも救急隊でも最も使用されています。
長所は分かりやすいところ。
3-3-9度方式とも呼ばれ、簡便ではあるものの意識変容に対して性格な評価が出来ないという弱点があります。
血管障害では予後とよく相関しますが、重傷頭部外傷では後記のGCSの方が、運動の項目が盛り込まれていることからか予後とよく相関します。
 

大分類
小分類
スコア
刺激がなくても覚醒清明
清明とは言えない
見当識障害がある
名前、生年月日が言えない
刺激すると覚醒目的のある運動をするし、言葉も出るが間違いが多い10
簡単な命令に応じる20
呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼30
刺激しても覚醒しない痛み刺激に対して払いのける100
痛み刺激に反応し、手足を動かしたり顔をしかめたりする200
痛み刺激に反応しない300

GCS(グラスゴーコーマスケール)

GCSはグラスゴー・コーマ・スケールの略で、頭部外傷の意識障害の評価法としては世界で広く使用されています。
開眼機能E(eye opening)、言語機能V(verbal response)、運動機能M(motor response)のそれぞれの点数の合計によって判定します。
8点以下が重症、9~12点が中等症、13~15点が軽症と分類されます。
 

大分類
小分類
スコア
E 開眼自発的E4
言葉による
痛み刺激による
なし
M 運動反応命令に従うM6
はらいのける
逃避的屈曲
異常な屈曲
伸展する
なし
V 言語性反応見当識ありV5
錯乱状態
不適当
理解できない
なし

自賠責損害調査事務所からの照会書面

自賠責保険に後遺障害に係る請求が受け付けられると、その内容により高次脳機能障害が問題となる事案と位置付けられれば、主治医および被害者親族等に宛てて照会書面が各地区の自賠責損害調査事務所から送付されてきます。

主治医に宛てた照会書面の中には、この意識障害についての照会書面も含まれており、そのタイトルは「頭部外傷後の意識障害についての所見」です。

改めて、高次脳機能障害にかかる照会書面を一式ご紹介したいと思います。
 

事故受傷時に意識障害が無かったら?

上記の6時間以上の意識障害、あるいは1週間以上の軽度意識障害や健忘症が認められていた場合は、高次脳機能障害としての認定を受けるための第一段階はクリアです。
逆に言えば、 事故受傷当初にこれに当てはまっていなければ、高次脳機能障害が後遺症として残る心配は少ない と考えられるでしょう。
 

話は戻り、事故受傷時に上記の意識障害等が無かった場合はどうなるのでしょうか?

長い審査が終わり、結果が戻ってきたら、意識障害が無かったことを理由に、症状は確かにあるのにもかかわらず、高次脳機能障害の認定がされない事があるのです。

もちろん、意識障害の有無や程度だけで認定をするわけではありませんので、例え上記の意識障害等より軽いものであったとしても認定を受けられる可能性はあります。
しかし、全く意識障害が無かったような場合は、高次脳機能障害としての自賠責保険での認定は相当厳しいものになってきます。

従って、高次脳機能障害様の症状が残っているのであれば、本当に意識障害がなかったのかをくまなく調べる必要があります。

では、どのように調べるのか・・・
 

そもそも、自賠責保険の審査先が、意識障害の有無や程度を調べるのは、先ほどお話しした主治医に対する照会書面です。
意識障害が無かったこと等を理由に高次脳気脳障害の後遺障害が認定されなかったのであれば、それはこの照会書面に事故当初意識障害が無かった、あるいはあっても軽かった旨の回答が行われた結果です。

医師はこのような照会に対してはカルテの内容を拾い上げて記入していきます。
忙しい医師は、このような書類の作成のときの見落とし、間違い、転記ミスは、おそらく皆さんが考えるより多くあります。

ですから、まずは自賠責保険会社に主治医の回答書面を開示してもらい、病院側からはカルテ等の関係書類一式を開示し、まずは カルテと回答に矛盾がないか をチェック。

矛盾が無ければ、次は看護記録などから意識障害様の記載がないかを細かく探していきます。

それでも意識障害があったような記載が全くないのであれば、消防から救急搬送記録の開示を受け、病院に搬送される前の状態も確認する必要があるでしょう。
 

 

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