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交通事故でムチウチ状態になり首を痛めたら、普通は病院に行くとレントゲンを撮られます。
それほど症状が酷くなかったとしても、後で酷くなってくることもあるので、初診時に必ず撮っておくべきものです。
病院によって撮影する枚数はまちまちで、正面からと横からの2方向しか撮らないとこもあれば、正面、側面、斜めから2枚、側面から前屈した姿勢と後屈した姿勢、正面から口を開けての7方向を撮るところもあります。
出来れば7方向しっかり撮ってくれる所がいいですね、特に事故の場合は。
最低でも4方向は欲しいところです。
けど、たいていは レントゲンを撮っても何も異常が無い という結果が出ます。
しかし異常が無いと言っても、それは事故により骨が折れていない、脱臼してないというだけであって、実は何も異常が無いということはほとんどありません。
特に年齢が高ければ高いほどその傾向は強くなります。
「異常ナシ」と言われているのに「異常アリ」とはどういうことかと言いますと、お医者さんは今回の事故で骨折や脱臼などの異常は無いと言っているに過ぎないということです。
むち打ちによって首の筋肉などの軟部組織を損傷してもレントゲンには写りません。
だから医師が異常ナシというのは当然なのです。
しかし人間、ある程度年を重ねてくると多かれ少なかれ重たい頭を支えている頚椎には、何かしらの異常を抱えていることが普通で、全く健康な状態の首の人の方が少なくなってきます。
その年齢はまちまちで中には40過ぎても綺麗な頚椎の人もいますが、10代でも問題を抱えている人もいます。
その頚椎の問題は、確かに交通事故によって起こったものではなく、退行性変化とか経年性変化と呼ばれるもので、つまり加齢現象による疾病なんです。
じゃ、事故には関係ないじゃないかと思われるでしょうが、決して関係なくはありません。
どういう事かと言いますと、交通事故の衝撃で首を痛めた場合に、その元々の経年性変化があることで、より重たい症状になったり、なかなか治りにくくなったりしてくるのです。
それでは、頚椎の経年性変化にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
それではレントゲンで確認することのできる頚椎の代表的な経年性変化にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。
一般的に言う背骨とは脊椎のことです。
脊椎は7つの頚椎、12の胸椎、5つの腰椎、それに一体化していますが5つの仙椎、それにやはり一体化していますが3~6個の尾椎から形成されていて、その一つ一つの椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板というものがあります。
この椎間板は老化などによって水分と主要構成成分であるムコ多糖類が減少して線維化し、硬く弾力性が無くなりひしゃげてきます。
椎間板はレントゲンでは写りませんが、椎間板がひしゃげると椎間板のある椎骨と椎骨の間、椎間板腔(ついかんばんくう)という所が狭くなるので、椎間板がひしゃげて扁平化している事が想像できます。
椎間板が扁平化しているということは、椎間板の衝撃の吸収能力が低下してくるので、椎間関節への負担が増加するので、同じ衝撃を受けても被害が大きくなる傾向があります。
また、椎間板腔の狭小化は、椎間板が外に飛び出す椎間板ヘルニアの可能性も示唆しています。
椎間板ヘルニアは加齢によるものもあれば、事故の衝撃によるものもありますが、詳しくはコチラで。
骨棘・・・骨の棘(とげ)と書いて〝こつきょく〟と読みます。
椎間板が変性しクッションの働きが弱くなると、上下の椎骨同士がぶつかったり、椎骨の後ろに付いている横突起という骨の椎間関節が摩耗してきます。
椎骨同士がぶつかる事によって骨がすり減り、骨が変形し、尖って出っ張り骨棘となります。
この骨棘が神経を刺激すると痛みや痺れなどの多彩な症状が生じてきます。
椎間孔は上下の椎骨と、その間の椎間板によってトンネル状になっている脊髄から枝分かれした神経が出ていく通り道になっています。
脊髄から枝分かれした神経根という神経の太い根元部分が、この狭い椎間孔を通ります。
さきほどの椎間板の話を思い出して頂きたいのですが、この狭いトンネルを形成しているパーツの一つである椎間板がひしゃげてくると当然そのトンネルは狭くなってしまいます。
そうすると骨が神経を刺激しやすくなります。
また、椎骨がずれるとこのトンネルはやはり狭まりますので、同じく神経が刺激を受けやすくなってきます。
相談時に「お医者さんに首が真っ直ぐになってしまっていると言われた。」と言われる方が割りといます。
他にも言われることはあると思うのですが、おそらく印象に残りやすいフレーズなのではないかと感じています。
では、首が真っ直ぐになるとはどういう事なのでしょうか。
背骨は真っ直ぐではなくS字状になっているという事をご存じの方も多いと思います。
そして頚椎部分はS字の最初の部分で、やや前方(のど側)に膨らんだカーブを描いているのが本来の形です。
しかし、その前弯(前への膨らみ)が消失し、頚椎が真っ直ぐになってしまっているということです。
真っ直ぐにならないまでも前弯が少なくなっている状態を生理的前弯の減少といい、診断書に記載されている事もよくあります。
そして真真っ直ぐの状態を頚椎垂直化、ストレートネックなどといい、逆に後ろに弯曲してしまっている状態を頚椎後弯形成などと言います。
では、生理的前弯が失われると何が問題なのでしょうか。
頚椎の前弯があることによって、重たい頭を効率よく支えているということなのですが、パソコンやスマホの使いすぎなどにより姿勢が悪く猫背気味で、生理的前弯が少ない、あるいは無くなってしまっている人が近年とても多いようです。
そして、それが原因で首のこり、肩こり、頭痛やめまいなど多彩な症状を起こす原因になるというのです。
先ほど、生理的前弯の無い人がとても多いと言いましたが、それは相当な割合です。
特に首に問題を抱えていない人を対象にレントゲンを撮って調べてみたところ、頚椎の弯曲が正常な人とそうでない人の割合はほぼ同じで、どちらかと言えば正常な人の方が少なかったという実験結果もあるくらいです。
また、撮影時の顎の位置を少し変えるだけでもこの弯曲度合いは結構変わってくるものなので、レントゲン所見としてそれほど気に留めるような問題でもなさそうです。
●事故とは直接関係のない加齢性変化であっても、実は後遺障害の認定には重要な事なのです。もし、中々よくならないのであれば、後遺障害の認定も見据えて動き始めましょう。